職人道具 扇子加工編①

100年以上前、慶応生まれの曽祖父の代から使われてきた扇子加工に使う道具です。扇面と扇骨を貼り付けた際、「こなし」という作業をする際に、この木で叩いて紙の広がりを押さえます。私が小さい頃は祖母が叩いていたのかな…この木を見ると、背中を丸めて座る祖母の姿とトントン、トントンと小気味よく聞こてくる音が記憶に浮かんできます。

向かって左側、黒くなっているところを持って叩くのですが、この黒い色も同じところを持って長年使うことで、このような色になりました。

木を持つのは三代目の母の手
人差し指があたる部分

叩くときは人差し指のところに一番力が入るので、こんなふうに凹んでいます!持ちやすくするために削ったわけではなく100年以上使い続けた結果、こんなふうに自然に凹んでしまいました。手に馴染むとはこのことですね。とはいえ、父の代で廃業してしまった今となっては「現役の道具」としての価値はなくなってしまいました。扇子を加工するため必要に応じてデザインされた職人道具。平成の半ば頃まで夏の涼を奏でる扇子を作ってきたのだなあ…と思うと感慨深いものがあります。

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